ちょっとした過去話を

さらしてみる。
ドバさんの恋バナとかあんまり面白くない上に過去話ってのもあれなんだけど、
置かないとお蔵入りしたまま眠りそうなので。

【俺がそれを拒む理由】
優しい奴は嫌いだ。
「何でまた泣いてんだよお前。」
呆れたように呟くと、その柔らかな亜麻色の髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
「だって・・・だって・・・・」
そいつはまるで子供のように、赤い顔をして、大粒の涙を流していた。
俺が初めて愛した女。
小さく溜息をついてからその場にしゃがみ込み、目の前の小さな体を後ろから優しく抱き締める。
そして首筋にキスを落とすと、耳元でそっと呟くように言った。
「またお前を泣かせるようなことしたか？」
すると女は首を横に振った。
後ろから回した腕に、暖かな涙がポロポロと流れ落ちた。
「違うよ、そうじゃない・・・」女は小さな手を俺の手に重ねた。
「ウルドバは優しいから・・・」
「・・・は？」
重ねた手に少し力を感じる。
「ウルドバは泣かないから・・・」
「ったく、お前は・・・」
絡めた腕をほどくと、頬を伝う涙をそっとぬぐった。
女はこちらを振り返ると赤い目でじっと俺をみつめる。
するとまた温かい涙をこぼし、俺の胸に頭をうずめた。
「子供かよ・・・」
呆れながら、肩に手をまわして、もう一度優しく抱きしめた。
優しい奴は馬鹿だ。
優しい奴は嫌いだ。
他人の分まで苦しんで、
他人の分まで涙を流して、
他人の辛さを、まるで自分の辛さのように・・・
何故俺のような汚い人間のために、何故お前のような綺麗な人間が悲しむ必要がある？
お前はいつも俺のために涙を流すんだ。

「ありがとう」

ああ、こんなにも愛おしい。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊
傷つくことを知りながら、
傷つけることを知りながら、
それでもお前が愛おしくてたまらない。
お前の側にずっと居たいと願うことは、
きっと何者にも許されぬ罪なんだろう。

だけど、
お前だけは
笑顔で俺を許してくれるんだろう？